他校の君。【完】



Side 一臣


朝、香澄の家の前に着いてからふと気付く。


(親がいる事忘れてた)


もし今、呼び鈴鳴らして香澄の親のどっちかが出てきた場合、


(…挨拶はそりゃするけど…)


「………」


まっ、いっか。

考えてるだけじゃ香澄は出て来ねーし。

追い返されたりとかはさすがにしないだろ。

そう考えながら呼び鈴に指を伸ばそうとしたら、


ガチャ


香澄ん家のドアが開いて中からおじさんが出て来た。

年齢的に香澄のお父さんだよな?


「おはようございます」


出てきたおじさんに挨拶をしてみる。

すると、


「あ、君は」


おじさんが俺を見て笑顔になった。


「???」


何か反応悪くないな。

何でだ。

悪かったら悪かったで困るんだけど、ドア開けたら知らない男が家の前にいて、おはようございますとか言ったら怪しくねぇ?


「いつかは定期を拾ってくれてありがとう」

「………定期?」


何の事だと記憶を手繰りよせてみる。

定期を拾った事は…

あるな。

かなり前に。

けど、女子じゃなかったっけ?

顔とか全然覚えてねーけど中学の制服着て…

ふ、と何かを思い出しそうになる。

けれど、チラリとおじさんを見た瞬間、


(あ、思い出した)


俺、知らないおじさんが定期落としたのを見て拾った事あったな。


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