他校の君。【完】



香澄父だったのか、とその偶然に驚いてしまうと


「今日はどうか…、まさかまた俺は定期を…」


俺が何かを言う前におじさんが自分の定期を探し始めた。


「え?いや、定期は拾ってないです」


定期を探すおじさんにそう伝えると、おじさんは探すのをピタリと止めて『そうか』と頷いた。

おじさんの一連の行動を見て思う。

香澄の性格ってもしかしておじさん似か?と。

前に生徒手帳落としてたし。

って今は性格の事を考えてる場合じゃないな。


「香澄…さんはいますか?」


いなきゃ困るんだけど他にどう聞けばいいのか分からない。


「…もしかして君は香澄の」

「はい。お付き合いさせてもらってます、杉沢っていいます」


おじさんにはっきりと答えると、おじさんはまた『そうか』と呟いてから玄関を開き、


「香澄、彼氏来てるぞ」


香澄を呼んでくれた。

そしておじさんは


「じゃあ」


と、また俺に笑顔を向けてから仕事に向かって行った。

おじさんをなんとなく見送りながら、印象悪くならなかったな、とほっとしていると、


バタバタバタッ


と中から聞こえた走る音。

かと思ったら、


バンッ!


「ふぎゃっ」


何かが勢いよくぶつかる音と、多分だけど香澄の悲鳴…って言うのか?そんな感じの声が聞こえた。


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