他校の君。【完】
その時の事を思い出して、一人手で顔をパタパタと仰いでみる。
けれど届く風はあまりに弱く、あたしの顔の火照りを到底収める事は出来ない。
だからと言って止める訳にもいかない。
ー…だって。
手で仰ぐのは照れを隠す為でもあるんだから。
ひたすらパタパタとしていると、一臣君がじーっとあたしを見下ろした。
「???」
どうしたのかと首を傾げると、一臣君の手があたしの髪に触れる。
「一臣君?」
「うん」
うん、と返事をされたけどやっぱり分からない。
そのまま暫くされるがままになっていたら、一臣君の手がすっと離れた。
「そう言えばもうすぐだな。香澄んとこの学園祭」
「うん」
学園祭の話に突然変わった為、取り敢えずコクリと頷くと、一臣君はどこか恥ずかしそうに『楽しみだな』なんて呟く。
あたしが恥ずかしがるのはいつもの事だけど、一臣君が恥ずかしがるなんて。
(なんか、可愛い)
何に恥ずかしがったのか分からなかったけれど、一臣君の可愛い所が見れたから、『まあ、いいかな』って思った。