他校の君。【完】



その時の事を思い出して、一人手で顔をパタパタと仰いでみる。

けれど届く風はあまりに弱く、あたしの顔の火照りを到底収める事は出来ない。

だからと言って止める訳にもいかない。

ー…だって。

手で仰ぐのは照れを隠す為でもあるんだから。

ひたすらパタパタとしていると、一臣君がじーっとあたしを見下ろした。


「???」


どうしたのかと首を傾げると、一臣君の手があたしの髪に触れる。


「一臣君?」

「うん」


うん、と返事をされたけどやっぱり分からない。

そのまま暫くされるがままになっていたら、一臣君の手がすっと離れた。


「そう言えばもうすぐだな。香澄んとこの学園祭」

「うん」


学園祭の話に突然変わった為、取り敢えずコクリと頷くと、一臣君はどこか恥ずかしそうに『楽しみだな』なんて呟く。

あたしが恥ずかしがるのはいつもの事だけど、一臣君が恥ずかしがるなんて。


(なんか、可愛い)


何に恥ずかしがったのか分からなかったけれど、一臣君の可愛い所が見れたから、『まあ、いいかな』って思った。



< 237 / 299 >

この作品をシェア

pagetop