他校の君。【完】
暫く三人の会話を楽しく聞いていたけれど、武君と翔君が自分達の駅で降りて行った。
残ったあたしはと言うと、一臣君と二人きり。
人気の減った電車の中はガラ空きだけど、あたしは一臣君のすぐ隣に座る。
ついこの前までは少し離れた所に座って寝たフリをしてたのにね。
「明日は朝だけ忙しいんだっけ?」
「うん。部活のお店番で」
学校で一臣君に会える事なんて無いから、なんだかドキドキしてしまう。
しかも、明日は私服の一臣君に会える。
「………っ」
一人で想像して、一人で照れちゃうと、不意に一臣君の手があたしの手に触れた。
「何に照れてんの?」
「え?」
覗き込んで来た一臣君との距離があまりに近くて、ついつい赤くなってしまうと、一臣君の瞳の色が意地悪なものへと変化する。
「教えろよ」
「………っ」
教えろよって言われても…。
恥ずかしくて言えないあたしを見る一臣君がかなり愉しそうに見える。
一臣君って本当意地悪だって思うのに、
そんな所も格好いいな、って思っちゃった。