他校の君。【完】



ー…
………


照れながら、別の場所へと歩きはじめる。

手はやっぱり当たり前のように繋がれている。


「あのさー」

「うん?」

「何か食「キュル」」

「「………。」」


一臣君が何かを言おうとしたタイミングで聞こえた、変な音。

二人揃って思わず無言になってしまったけれど、あたしと一臣君の表情は全然違うに違いない。

だって、一臣君は『え?』って今、何の音がしたのか分かってないような表情をしている。

対するあたしは、


(きぁぁああ!)


お腹が鳴っちゃった!!

と心の中で身悶える。


「香澄」

「え?」

「今の…」

「な、何?」


お腹が鳴っちゃったなんて、そんなの恥ずかしいから知らないフリをしてみる。

そしてあたしを見つめる一臣君からすいーっ、と視線を逸らす。

あ、今のわざとらしかったかもしれない。

でも。

誤魔化すのとか本当得意じゃないし、一臣君にはすぐにバレちゃうけど、これは知られたくない。


「香澄」

「う、うん?」


視線を逸らした筈なのに、一臣君が顔を近付けてくる。


(ち、近い、近い!)


あまりの近さにドキドキして、息を詰めてしまいながら、今度は『すいーっ』ではなく、勢いよく、グイーンと視線を逸らしてしまった。



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