他校の君。【完】
校門で一臣君を待ちながら俯いて考える。
けれど、はっきりとした理由が思い浮かばない。
「……。」
未だ続く、後夜祭の明るい曲を聞きながら、一臣君の事ばかり考えた。
じゃないと、雪がしてくれた告白を思い出してしまいそうだったから。
迷惑だった訳じゃない。
嫌だった訳じゃない。
こんなあたしを好きって言ってくれたのは嬉しかったから。
でも、気持ちに応える事は出来なかったから、
ー…何て言えばいいのかな。
感情がごちゃごちゃで分からない。
何かを我慢するかのように、キュッと唇を噛みしめていると、
「香澄!」
一臣君の声がして、あたしは顔を上げた。
走って来てくれたらしい一臣君に小さく驚いてしまいながらも、心臓がキュゥと音を立てる。