他校の君。【完】
聞いた話によると、何故か一臣君の学校の弓道場の近くに落ちてたらしい。
それは多分、
「…合同練習の時に」
落としたって事だよね。
普段生徒手帳なんて使ってないから、本当に気付かなかった。
「ありがとうございます」
一臣君に三度もお世話になってるなぁ。
もう一度お礼を言って、頭を下げると、
「だから、敬語いらねぇって」
と苦笑しながら言われた。
「………っ」
不意打ちで見せられた一臣君の苦笑にあたしの心臓が壊れるんじゃないかってくらい大きな音を立てた。
しかも近距離。
見惚れちゃいそうになる。
ポーッとしちゃうのを隠したくて俯いてしまうと、
「敬語、本気で無しな?」
と頭上から声が振って来て、あたしはコクリと小さく頷いた。