他校の君。【完】
「繋いでんの一瞬で忘れた?」
笑いながら聞いてくる一臣君にあたしはふるふると頭を振る。
忘れてた訳じゃないし、
忘れる訳がない。
だって手を繋いでる事にこんなにも照れてドキドキしてるのに。
「…ただ」
「ただ?」
ただ、みっちゃんを見て、手を繋いでた事が
「頭からすっぽり…」
抜けちゃっただけ。
「だから、忘れた訳じゃ…」
ないよ?
と窺うように一臣君を見上げると、
「俺と手を繋ぐのは『みっちゃん』よりは下って事だな」
なんて言われた。
(……へ?)
し、下?
下って何?
下とか上とかあるの?
「『みっちゃん』に妬くな」
「……や!?」
妬く…!?
一臣君が?!
まさか、そんな嬉しい事ある訳無いよね?
きっと冗談だよね?
「か、一臣君、そんな冗談…」
「あ、やっぱ分かる?冗談って」
「………」
ははっ、とまた笑った一臣君にちょっとだけ落ち込んだ。
冗談だと分かってたけど、本人に言われると、やっぱりグサリとくるなぁ…。