他校の君。【完】


Side 香澄


「……っ」


お化けが出てくる度、ビクッ、と身体を奮わせてしまうあたし。

キャーだとかイヤーだとか、他のお客さんの女の子らしい声が遠くで聞こえるけれど、そんな声を出す余裕がどこにあるんだろう。

凄いよ。

あたしなんか恐すぎて声も出ないのに。

うさぎをギュッと抱きしめながら、かなり挙動不審になってしまう。


「作りもんだろ?」


隣からクスクスと笑う声が聞こえて、あたしは涙目で睨みつけた。

      カオ
「情けねぇ表情。そんな恐い?」


恐いに決まってるでしょ。

だって、だって、お化けがい…


ガシッ


「ッキ、ァァアアア!!」


いきなり誰かに手首を掴まれて、手を振り払いながら、本気で叫んじゃった。

声、ちゃんと出た。

でも、女の子らしい叫びには全くならなかった。


「あ、悪い」

「……っ!」


叫んだあたしに一臣君がニヤニヤと笑いながら謝る。

暗いけれど、合間合間にある灯籠で一臣君の表情が見えてしまった。


(わざと!?)


今のわざとなの!?

あたしがびっくりするの分かってて…!!

絶対、そうだよね?!

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