他校の君。【完】


Side 一臣


ー…サクッ


いつもなら的の真ん中に当たる筈の矢が、的にすら当たらず、隣の土に刺さった。


「………ハァ」


思わず小さく溜め息を吐いてしまうと、部長が不思議そうに俺を見る。

…と思ったら、隣のテニスコートの辺りから『みちる先輩』と俺の好きな先輩の名前を呼ぶ男の声がして、部長はテニスコートの方に視線を移した。

俺もつい、つられて見てしまう。

休憩中らしい、テニス部のテニスコートの側には見た事のある同じ一年の男にちょっかいをかけられてるみちる先輩。


「…一臣、矢」


テニスコートの方から視線を外さずに、低い声で俺に矢をよこせと呟き、手を出した部長に俺は首を振る。


「部長。人を狙うのは犯罪なんじゃないですか」

「いいからよこせよ。俺はあいつを消…「駄目ですよ」


俺達のそんな会話と平行して向こうではみちる先輩が今だちょっかいをかけられている。

その光景に部長は舌打ちをしてから、テニスコートに向かって走って行った。


部長の背中をそのまま眺めていると、みちる先輩の所に着いた部長が男を追い払う。


それをさらにひたすら眺め続けていたら、


「好きな先輩は憧れの部長の彼女」


切ないなぁ、と、いつの間にか近付いて来ていた武に言われた。


(だから、切なくねぇよ)


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