君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
何と言って罵れば良いか分からなかった。
いや、そも、声は出ないのだけれど。

マーナオが言葉に成らない声を出していると、

「符の効果は朝方には戻るよ」
ゆかりが言う。
「次からは従ってくれよ。この符だって打ち込むのは疲れるんだ」


物理的拘束はされない。
ただ拘束より質の悪い呪術を掛けられているのは明らかだ。


マーナオは小さな唸り声を立てながら、侍女達に連れ出された。

だから、

それを見送るゆかりの顔が、暗さを纏った内に向かう複雑な表情をしていた事を、知る由もなかった。
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