君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
「時間を掛けて基礎となる術式を打ち込み、作動用の簡易符のみでその場に合わせた命令に書き換えます…」

自分の開発した技術の話になると、ゆかりはとたんに活き活きとし出した。
その顔は自慢話をする顔ではなく、上手い謎かけの種明かしをする時の子供の顔だ。

技術理論にゾロゾロと並ばれると、マーナオにはそれ自体が呪文に聞こえてくる。
呪詛の綻びを見つけたかったのだが、おいそれとバラす訳はないだろう。
忍耐強く訳の分からない話を聞いていると、
再び当主が口を挟む。
「ふむ。だが、それでは術を使えぬ事態になれば大事になるぞ?」
ゆかりは明るく微笑み、
「私が死にましたら、私に親しい者―今でしたら父上に印が移ります」
「ふむ」
当主の反応は芳しくない。見れば周りも一様だ。
「まぁ。大体は分かった」
「わたくしの説明もこれぐらいでしょうか」
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