君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
「ふむ。では」
当主は笏を手のひらに打ちつけて
パチン
と大きく音を立てた。

マーナオの全身が総毛立つ。

―何だコレは!

殺気に似た感情が、宴席を包んでいた。
放つのは…

「力試しだ」
当主はそう言うと、微笑を浮かべながら立ち上がる。しかし、瞳は見る者を射殺す刃のようだ。
ただ、
その心は凪の海の如くに穏やかで、殺気といった剣呑なモノとは一線を画す。


この、宵の帳に紛れながらじっとりと絞め殺す気配は…

―こいつ等全部か!

2人を取り囲む無数の視線の中に混じる、およそ人の物とは思えない強烈な殺気。

灯りがはぐる人世の外は、血生臭い魑魅魍魎の世界のようだ。
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