君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
宴席の前庭が力試しとやらの為、片付けられてゆく。

術を付け替えながら、ゆかりは開口一番きいた。
「驚いたか?」

―どれのことなんだか。

マーナオが反応しないでいると、
「小さな声ならば出せるようにしておいた。身体も殆ど自由だろう?」
符を打ち直したゆかりが言った。

ゆかりのその言葉に、マーナオは腕を少し動かす。
「器用なモンだな」
か細い声しか出なかったが、内緒話には十分だろう。
「だが、身体の自由は余計だったんじゃねぇか?
お前の術より俺がその細首へし折る方が速いぞ?」
言うが早いかマーナオの片手がゆかりの首に添えられる。

ゆかりは眉一つ動かさず、皮肉を込めて告げる。
「聞いてはいなかったかな。
お前に打ち込んだ術には、僕が死ねば僕の血縁に権利が移るように書き込んであるよ。
それは恒久的な効力を持つ」

恒久とは初耳だが、そんな言葉に脅されるマーナオではない。
ニヤリと笑いながら、
「お前を殺して即座に逃げる。俺なら一晩で百里は行けるぞ」(※一里は約560m四方の土地の事 百里なら直線で約56km対角線だと79km)
誇張はなしに脅した。
< 39 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop