君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
手入れの行き届かぬ様が容易に見て取れる枝葉の伸びた立木の中、
丁寧に整え、掃き清められ、まるで坪庭の様な小さな庭らしい一角があった。
声の主は、そこにある小さな石組みの端に居た。


見上げる顔に月の光が降り注ぐ。
まだ年若い娘だった。
艶やかな黒髪を腰よりも伸ばし、質の良い着物を着ている所を見ると、この屋敷の姫だろうか。
透き通った白い肌に赤味がさし、紅をはいた様な小さな唇をやや開け、黒玉のごとき瞳は驚きに見開かれている。
その目の輝きは好奇心のそれだった。


「あ、あの!」
姫はそこまで言って気がつき、慌てて袖で顔を半分隠し、
「どのような方なのですか?」
続けて聞いた。
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