君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
想定内か、ゆかりは首をとられながらも平然と続ける。
「逃げたとして術自体が罰を与える事はないが、距離を空けたとしても、符なぞ造り方さえ変えれば山も川もいくらでも越えてゆくぞ?
国中には逃げ場はないかもな」

逃げられるが追跡されたら終わり。前言から、当主は確実に追う人だということか。

―ん?

何かが引っ掛かったマーナオに気付かず、ゆかりは続ける。
「で、ここから先は取引だ。
僕には悲願がある。それさえ叶えば他は顧みない程の願いがね」
その言葉を裏打ちするかのようにゆかりの目は静かに燃え、遙か彼方を望んでいる。
「当主を引き吊り降ろす。とかか?」
「必要とあればね」
マーナオはからかったつもりだったが、今すぐにでも出来そうな口振りでゆかりは言った。

―宴の連中なんぞ眼中に無しか。

強さからか、馬鹿だからか、今は判然としない。

分かる事と言えば…。
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