君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
「構えを取れって言いに来たけれど…要らない事もあるのかな」
急に横でゆかりの声がした。
見れば肩口に複雑な切り紙―幣が付いていた。

試しに呟いてみる。
「『構え』とは何だ?」
「そこからなの!?」
ゆかりの驚いて高く跳ね上がった声は、会話が成立した事を示す。
「予備動作の事だよ。あの様に溜める」
見れば獣の魔性は再び縮こまっている。

「分からないな」
「意識した事が無いのか…」
ゆかりの声は悩むように澱んだ。

「要る要らないは今するべきではないよね。
相手について教えて。父上の使役なら数体は分かるから」
ゆかりは素早く切り替えて質問してくる。

「見た目は獣。だがあれは魔性だな。無駄話をした。知恵はかなりある」
マーナオは答えたが、ゆかりからは返事がない。

「お前の父とやらは欠けのない魔性を何体も従えるのか?」
嫌味に返しもない。
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