君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
しばらくの無言のあと、ゆかりが叫んだ。
「清か!」
「せい?」

ゆかりの声は焦りを含んでいる。
「清媛(せいのひめ)と呼ばれてる。彼女に定まった姿はないよ」

目の前の獣に姿がない?

「寄生型か?」
「彼女は氷室の…低温の液体の魔性だよ」
殺気に隠れて気が付かなかった。空気は確かに清媛が現れてから冷えている。
力が強いため実体に近い形が取れるのか。

「触れたら凍らさせられる。触れたら駄目だよ」
ゆかりが心配そうに忠告してくる。

「無理だな」
自慢ではないがマーナオには、
「俺は蹴るか殴るしか出来ない」
マーナオの魔性としての力は戦いに使う類ではなかった。

「何かないの?!」
ゆかりの声は悲鳴じみている。
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