君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
先に仕掛けたのはマーナオの方だった。

直線距離で詰めるマーナオを清媛は横跳びで避ける。
警戒されている。
姿無き力と知恵。力もだが知恵も優れるのだろう。それが一番厄介だ。


マーナオが向きを変えようとすると同時に、清媛はマーナオに跳び掛かる。マーナオは慌てず地を蹴り最速で避け、清媛の繰り出した獣爪は空を切った。

捻った体勢から見えたのは、地を抉る爪痕と土中の水分が凍り付き盛り上がる様。
霜柱などという生易しい物ではない。氷柱が生える光景は相手を穿つ千の槍に見える。

ゆかりが慌てる訳だ。

マーナオの思考は澄み切っていて、清媛の瞳の動きを追い続ける。

まだ楽しんでいるならば、不定。だが、今ので舐めきったなら、勝てる。焦って来るならば、負け。
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