君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
間の抜けた問いだ。と、彼は思った。
「『どのような』?」
答える義理もなかったが、興味のままに返す。

姫は困った顔で、
「えぇと、なんと言ったら良いのでしょう」
顔を隠すのも忘れ思案し始めた。

その様が楽しく思え、さらに
「姫には何に見える?」
聞いてみる。

姫はすぐさま答えて、
「月に縁取られたお姿は殿方に見え……」
そこまで言って慌てて顔を隠した。
しかし、異性に姿を晒すべきではないと教えられている事はいるが、身には付いていないのか、恥じらう素振りもなく袖の隙間から空を見上げる。

けれど、姫には彼の姿は逆光のために面立ちも何も見えてはいないようだった。


ちょうど良い。
彼は身を翻し、飛び去ろうとした。
しかし、
「鬼(※悪霊の意)…ですか?」
姫のその言葉に動きを止めた。
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