君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜

一瞬だった。


次郎の顔が醜悪に膨れ上がり、家屋のごとき大きさに到達するまでが、まばたき一つの間ならば、
マーナオが後方宙返りの要領で凍った脚を打ち下ろし、次郎の頭どころかその体まで鉈で割ったように両断するのは、まばたき半分ほどの時間であった。


次郎の開きは雷に打たれたように断面が焦げ、
蛙らしい生臭さをさらに焼いた酷い臭いを発していた。


マーナオは屋敷を振り返る。
これでも、まだ仕掛けるか。といった不遜に取られるだろう動きで。

効果があったか、屋敷は静まり返っている。
ゆかりの弊まで沈黙しているが、マーナオは構わず屋敷に引き揚げた。
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