君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
彼は、姫の瞳に彼以外映らないほどの距離まで顔を寄せ、
「お前には俺が姿定まらぬものに見えるか」
怒りのこもった声で聞いた。

姫は声も出ないのか、目を反らせないまま左右に頭を振った。

「お前には俺が脆弱な女子供ばかり襲う卑怯者に見えるか」
怒りが納まらないのか、彼はなおも言い募る。

彼と初めて合ったばかりの姫に分かりようもない問いだが、姫は先ほどよりも激しく頭を振った。

それで少しは気が晴れたのか、彼は上体を起こし顔が姫から離れる。

姫はホッとしたのか長い息を吐いた。

それを見た彼は再び顔を近づけて、
「まぁ。同じ魔性の者だがな」
意地悪そうに笑った。
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