君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
さて、姫に顔を見せた魔性は思案した。

この様な寂れた屋敷の姫だ、そう発言力は無いだろう。

何も痕跡を残さず帰れば面倒にはならなそうではある。


「ぁ、あの!」
姫がまだ地面にへたったまま声を上げる。

彼は驚きに細い目を見開き、
姫は祈るように胸の前で手を組んだ。

「申し訳ありません。申し訳ありません」

―命乞いか。
魔性にとって聞き慣れた言葉が続く。
そう思っていたのだが、

「貴方を傷付けてしまうとは思ってもみなかったのです。
非礼はお詫びします。
償える事が出来るのであれば致します。
本当に申し訳ありません」
魔性に対して恐れがないのか、それとも貴人のプライドか、
姫の目は真っ直ぐに魔性を見、声音は凛としている。
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