君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
「別に……」
魔性の方が思わず目をそらす。
「分かったのなら充分だ」


姫は顔を輝かせ、
「有り難う御座います!」
本当に、本当に嬉しそうに言った。


魔性は困惑していた。
陽光の恩寵届かぬ世界でしか生きられぬ身。自分の世界が狭い事は知っている。
それでも、この様な娘…いや、人間がいるとは思いもしなかった。

恐れず、敬わず、同じ一つの個として。
人間同士なら普通なのか?
魔性の身だから解らないのか?


魔性の困惑をよそに、
姫は倒れたままの姿勢を正し起き上がり、はたはたと着物の裾をはたく。
そして、
同じ地面に立っているものの頭一つ以上大きい魔性を見上げる。
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