一枚の壁
『クリスティーナ…
ハンスは上等兵になるために、何をしたか知ってるか?』
「親父さん、ご存知なんですか!?
クリスティーナには、言わないで下さい!!」
ハンスが声を荒げた。
「何があったの…?
ハンス、パパ」
『クリスティーナ、パパの話を落ち着いて聞くんだ』
「そんなに大変な話なの?」
『あぁ。』
「親父さん、クリスティーナには言わないで下さい」
『クリスティーナには知る権利があるだろう?
ハンス、お前と結婚するなら…』
「パパ、教えて」
「クリスティーナ…」
「私、ハンスを信じてるから」
『ナチスが薦めている、ユダヤ人を絶滅させる政策は知っているだろう?
俺が嫌いな政策だ。
だが、ハンスは…
その政策に加担し、この地域に住むユダヤ人の情報をフリッツ大佐という人に渡した。
俺ら、この街の人間はユダヤ人の情報が漏れて迫害されないように協力しあってきたのに…
違うか?ハンス』