一枚の壁
私は気付いたら、エリーナ叔母さんのお店でオリンピック用の横断幕を縫っていた。
エリーナ叔母さん曰わく、脱け殻のような私をハンスお兄ちゃんがつれて帰ってきたらしい。
《クリスティーナ!
何があったの?
叔母さんには教えなさい》
「ハンスお兄ちゃんに告白された…」
《やっぱりね♪
ハンス君は昔からクリスティーナが好きだったもの。
マリア姉さんも二人が結婚したらって言ってた事もあったもの…
問題はフランツ義兄さんよね》
「叔母さん!
私はまだ16歳だし、ハンスお兄ちゃんに返事もしてないのよ…
結婚なんて………」
《先の事じゃないわ!
マリア姉さんとフランツ義兄さんが結婚したのは、姉さんが18の時だったもの。
私はあいにく、未婚だけど(笑)
ハンス君なら良いんじゃないの♪
優しいしハンサムだから…
なにより…
〜貴方を大切にしてくれる〜と私は思うわ》
「叔母さん…」
《フランツ義兄さんの、ナチス嫌いは治らないかもしれない。
だけど、ハンス君が軍人になったのも立派な生き方だと思うの。
クリスティーナ、貴方は自分の気持ちに正直でありなさい!
私のようにならないためにも…ね》
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