一枚の壁
決別
親愛なるハンス・ブロイル様へ
お久しぶりです。
ご無沙汰をお許し下さい。
この度の出征は私も誇らしく思っております。
フェルディナンドさんから貴方のお話は聞きました。
でも、私はどちらの選択肢も選びません。
お腹の子は私だけの子です。
ですから、貴方に認知して頂きたくありません。
かと言って、フェルディナンドさんに頼るつもりは全くありません。
今も私は貴方を愛しています。
それは一生変わりません。
だからこそ、私はこの子と生きていきます。
ナチスにはついて行けません。
ユダヤ人も身体障害者も精神病患者も皆、等しい命を持っています。
貴方が私だちの為に、数百のユダヤ人をお売りになった…その事が嫌なのではなく、そうさせた私自身が嫌なのです。
貴方と私はずっと一心同体です。
貴方がほかの方を愛しても私は貴方を愛し続けます。
ごめんなさい。
過去未来現在も愛を込めて…
クリスティーナより