一枚の壁
「あっ!!
ママ」
「クリスティーナ、話は聞いたわ…
立ち聞きしてごめんなさいね」
「マリア、君はどうする?」
「私はドイツに残ります」
「ママ!!
ダメよ。
強制収容所に送られるわ、きっと」
「クリスティーナ、聞きなさい。
あなたとルドルフはスイスに行きなさい。
そして、スイスからイギリスのおばあ様のお宅に行きなさい。
資金はママが用意するから」
「マリア、私たちにはまだ貯蓄がある。
それをすべて子供たちに持たせよう。
君のお母様なら安心して預けられる。
クリスティーナは自分だけの身体じゃないんだし、ルドルフはまだ余りに幼い…」