一枚の壁








「あっ!!

ママ」





「クリスティーナ、話は聞いたわ…

立ち聞きしてごめんなさいね」






「マリア、君はどうする?」






「私はドイツに残ります」




「ママ!!

ダメよ。
強制収容所に送られるわ、きっと」





「クリスティーナ、聞きなさい。


あなたとルドルフはスイスに行きなさい。
そして、スイスからイギリスのおばあ様のお宅に行きなさい。


資金はママが用意するから」





「マリア、私たちにはまだ貯蓄がある。

それをすべて子供たちに持たせよう。
君のお母様なら安心して預けられる。

クリスティーナは自分だけの身体じゃないんだし、ルドルフはまだ余りに幼い…」











< 144 / 202 >

この作品をシェア

pagetop