一枚の壁
「見せて見ろ。
確かに親衛隊の韻だ。
だが信用できない。
電話をして確認するぞ」
「はい」
しばらくして電話を変わるようにと言われた。
「もしもし、クリスティーナ・アーベルです。」
「私はフリッツ大佐です。
旅行券とビザは確かに私が許可したと伝えたよ。
それでも納得していないようだったから、君は私の内妻で私のイギリスの親戚の所へ挨拶へ向かうんだと言った。
勝手なことを言ってすまない。
ハンスと何があったかは知らないがそうとう覚悟の上だろうと思う。
お父様とお母様は収容所だが、看守に圧力をかけたのでそこまでひどい目にはあわないはずだ。」
「大佐、何から何までありがとうございます。
両親が無事なら…
何があってもイギリスにたどり着きます。
ハンスには、もう連絡もしません。私が悪いんです…」
「愛しているならまだ大丈夫だよ。」
「いえ、私と彼は別の道を選んだんです。
決して交わることのない道を…
大佐、色々とご尽力ありがとうございました。
イギリスに着いたらお手紙をお出しします。
検閲に引っかからないように、テレジアという偽名を使いますね」
「わかった。
気を付けて下さいね。」