一枚の壁




「ドイツの戦闘機がこっちに来るぞ――」









「ルドルフ!」



「姉ちゃん!」




私たちは堅く抱き合った。



もう船はだめかもしれないと思った。







その時――



ドイツの戦闘機がイギリスの軍艦に砲撃された。











「姉ちゃん、危機一髪だったね」




「本当に…
怖かったでしょう?」






「大丈夫だよ。
僕は男の子だから…」






「ルドルフ…」









「もうすぐ港だよ。
生きてるよ、僕たち!

姉ちゃん!」






「生きてるのね…
ルドルフ…
愛してるわよ」






「僕も姉ちゃんが大好きだよ!」









私は初めてルドルフに抱きしめられた。



今まで私が抱きしめてきた幼い弟は、ずいぶん大人になった…



戦争のせいで、自分を抑えることを覚えたんだ。





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