一枚の壁
「わかりました。
でも、私たちは亡命したいんです。
両親はナチに拘束され強制収容所に送られました。
私たちは、祖国にいると死ぬかもしれないんです!
だから……!」
「落ち着いて下さい。
あなた、妊婦さんでしょ?
感情を荒立てると身体にさわるから」
「はい。
でも…
イギリス政府に亡命を要請します。
もうすぐ祖母が迎えに来ますから」
私は一通りの話をした。
その時、下腹部に水が濡れたような気がした。
「ルドルフ…!
破水したわ」