一枚の壁
フリッツ大佐ってそんな凄い方だったんだ…
なら、僕が話すわけにはいかない。
知らないで通すしかない。
「本当に知らないんだ。
電話で喋ったのは、ママとだし。
フリッツ・フォン・ゲートハルトなんて名前も聞いたことがない。
姉さんの出産をイギリスのおばあ様の家でするために、僕はイギリスに来たから、ママにその話をするために電話をしただけだよ。」
「だったら、なぜ電話先の番号がドイツ陸軍大佐の家なんだ?」
「ママはその家で、家政婦をしてるから。」
「嘘をつくな!」
「おじさんこそ、僕をこんなところに拘束して、ただで済むと思ってるの?
僕はドイツ人だよ。
イギリス人じゃない。」
「貴様!!
子どもだと思ってぬけぬけと」