一枚の壁
「ドイツは、今にヨーロッパ全土を征服するだろう。
確実にヨーロッパはファシストの餌食だ。
そうなっても、我がイギリスだけは民主主義と国王陛下をお守りする。
そういうふうに、思っているものが多い。
ドイツもやり方は違えどそうだろ?
お前は私が考えるより、賢い子どものようだから。
わかるな?」
「僕の父さんは、ユダヤ人と親交が深い電気技師だった。
昔、父さんはユダヤ人の教師に技術を教えてもらったから、ユダヤ人は賢いっていつも言ってた。
でも、ナチスがユダヤ人排斥を始めて…
僕の地域では組織的にユダヤ人を匿ったんだ。
それが、露見して…
父さんと母さんは収容所に送られた。
でも大佐と兄ちゃんのおかげで、大丈夫だった。
僕は誰も憎いとは思えない。
ただ、家族が無事で、みんなが生きてればそれでいい。
愛国心なんてクソくらえだ。」