一枚の壁





「おじさんはなんでイギリスに?」





「ずっと思っていたが、私はおじさんと呼ばれる年ではまだない。
29歳だからな。



医者になるために、イギリスに留学したんだ。

でも、ナチスがユダヤ人医師の活動を1933年に禁じて、活動出来なくなった。

だから、家族で亡命したんだ。」









「亡命…!!」






「お前も亡命だろ?

半ば」







「そうだよ。

姉さんはドイツに帰る気はないと思う。


僕は、ドイツ人であるまえに人間だから…

人権が侵害される場所には行きたくない。」











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