一枚の壁
『お前はまだ18歳だ。
初恋にのぼせ上がっているだけさ…
ハンスも、20歳なんだ。
いつか、一時の感情だったと思う日がくる。
だから、お互いに忘れなさい』
「パパ!!
いや!!!
私はハンスしか見えない」
『お義父さん!
俺が軍人だからですか?
ナチス・ドイツの人間だからですか?』
『そうだ…
ハンスが軍人でナチの人間だからだ。』
「パパはハンスと向き合ってないわ!
ナチスという目で、ハンスを見てる。
ハンスは、優しくて…
私とルドルフのお兄ちゃんのような存在なのよ!
なのに、どうして?」
『俺の友人に、
第一次世界大戦で死んだ奴がいるんだ。
そいつは、逞しい軍人だった…
だけど、戦争で死んだ。
そいつは、
結婚したての新妻と…
腹の中に新しい命を残して逝ってしまった。
だから俺は、軍人とは結婚させたくない。
クリスティーナがそうなるかもしれないなんか、耐えられん!
軍人に娘はやらん!!』
.