一枚の壁
予兆
私はハンスに貰ったチケットでオリンピックを見に行った。
ハンスは、兵卒ながら…
親衛隊にも近いようだった。
親衛隊とは、ヒトラー総統閣下の直轄の組織だ。
きっと、一年もしないうちに…
ハンスは、戦場にかりだされる。
私はなぜか、そんな気がした。
もし、生きて帰ってきたら親衛隊の隊員になる…
行進の後――
「ハンス!
素敵だったわ」
ドイツ兵ばかりの所にいるハンスに声を掛けた。
『ありがとう。
クリスティーナ』
すると、ハンスが誰かを呼んだ。
『大佐殿、ご紹介致します。
私の婚約者、
クリスティーナ・アーベルです』
私は戸惑いながら
「初めてお目にかかります。
クリスティーナ・アーベルです。
よろしくお願い致します」
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