一枚の壁
『その頃から俺は…
君が好きだったよ。
だから、兄貴面をしてた』
「なんか照れるわ」
『でも…
俺が、出征してる間に…
君がどこかにいかないか不安なんだ』
「大丈夫よ。
私が心配なのは…
国の為に働くあなたの、足枷にならないか…
私達の為に、生きようとして苦しむんじゃないか…
いつも思うの。
あなたは軍人にしては、優しすぎるわ」
『そうかもな…
学校で、冷酷になれと教えられても…
俺には出来ない』
「いいじゃない。
出来なくっても!
私は優しいハンスが大好きだから…
人を殺すにしても、冷酷で悲しみも感じないような人になって欲しくはないもの」
『ありがとう。
クリスティーナ。
君の言葉、いや…
君の存在が俺の心を癒やす。』
「そんな素晴らしい存在じゃないわ」
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