一枚の壁






「ハンス。

フェルディナンド・ツェルニーさんを知ってる?」





『あぁ、
高校時代の同級生だよ。』








「親友のエリザのお兄さんなの…
前から面識があって。

雨の日によく送って下さってるし。


ハンスと婚約したって言ったら告白されちゃった」







『フェルディナンドに?』





「うん。。
勿論、お断りしたよ」




『うわ――

嫉妬するな。

フェルディナンドは良い奴だろ?


あいつ、今は大学生だろうけど弁護士を目指してるんだ。


昨日、飲んでた時に言ってた。
そん時に、好きな人がいるとも言ってたな…
《その人は、金髪で青い目の可愛らしい人なんだ。
森の妖精のようで》と言ってた。

それがクリスティーナだったのか…』







「今まで通り、お友達としての付き合いはするよ。

でも、二人きりになったりはしないから…

ハンス、安心して?」







『俺が居ない間に、フェルディナンドに惚れたりしない?』



「する訳ないでしょ!」







『ありがとう。』






ハンスが大きな体で私を力いっぱい抱きしめた。














「少し苦しいわ…」




『ごめん、加減が分からなくてさ』




二人で笑いあった。

















「ハンス、キスして?」





『クリスティーナ!
ダメだ…』




「なんで?
私が嫌いなの?」





『違うよ…
キスで止める自信がない』






「いいよ。
ハンスにならムチャクチャにされても良い…」





『お義父さんに、聞いてからにしよう』



そう言ってくれたハンスの顔は真っ赤だった。





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