一枚の壁











階下におりた。






「ママ−!
パパは今日何時頃帰ってくるの?」




『八時頃じゃないかしら…

ハンス君は夕食、食べるでしょ?』





『はい。
お言葉に甘えて…』




「ハンスと二人でパパに話があるから」









『そうなの。

ルドルフがハンス君と遊びたいみたいよ』





『ルドルフ!
帰ってきたのか?』





ルドルフは八歳だからまだ小学生だ。






『ハンス兄ちゃん!
サッカーしようよ!!』






ハンスは私の顔を見た。




「ハンス、遊んであげて。
あなたの出征の話、ルドルフにはしてないから」





『わかった。
俺が遊びながら話すよ』




『ハンス兄ちゃん!
行くよ』




『ルドルフ!
じゃあ公園でしよう』




『ありがとう、ハンス兄ちゃん』








二人は楽しそうに走っていった。






『ハンス君に悪いことしたわね…
ルドルフの我が儘に付き合わせてるみたい』




「私、ハンスの出征をルドルフに言ってないの」






『だから、ハンス君が言うのね。
ルドルフに』






「えぇ」






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