一枚の壁
日も暮れた頃、二人は帰ってきた。
眼をはらしたルドルフと強い表情のハンス。
『ねぇちゃんの馬鹿。
なんで、なんで兄ちゃんは行っちゃうの?』
「ルドルフ!
ハンスは国と私達を守るの。
そのためよ」
『ルドルフ…
強くなれ。
そして、俺がいない間、クリスティーナを守ってくれ…』
「ハンス…」
『わかった。
ハンス兄ちゃん、ねぇちゃんを守るよ。
それにもう泣かない』
『ありがとう』
ママが玄関に来た。
『ルドルフ。
顔を洗いなさい…
きたないから』
『は――い!』
そう言ったルドルフはいつもの元気なルドルフだった。
『ハンス君も、今、お茶をいれるわね』
『すみません』
『いいのよ!!
世話焼きが趣味だから(笑)』
ハンスと私は笑いをこらえながら笑った。
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