一枚の壁
「ハンスお兄ちゃん!
兵学校は?
何でここにいるの?
オリンピックの行進には参加するの?」
『クリスティーナ…
相変わらずだね(笑)
いきなり聞かれてもわからないよ。
一つずつ聞いてくれよ』
「じゃあ、兵学校は?」
『卒業したよ』
「何でここにいるの?」
『休みだからさ』
「オリンピックの行進は?」
『参加するよ』
「見に行きたいけどチケットがないの…
残念だわ」
『大丈夫!
ほら♪』
「チケット!!
私に?」
『君以外に誰がいるのさ。
見にきてくれる?』
「もちろん!
行くわね」
私は今までになく舞い上がっていた。
ハンスお兄ちゃんは、凛々しいナチスの軍服姿で…
パパが見たら目をしかめるだろうけど、私には輝いて見えた。
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