一枚の壁









『クリスティーナ!
ハンス君!

パパが帰ってきたわよ』



二階にいた私達をママが呼んだ。






















「パパ、お帰りなさい。」





『ただいま。
ハンスは今日ずっとうちにいたのか?』





『えぇ。。
あのね、ハンス君が出征されるの…』






『なに?』





パパは明らかに不機嫌が悪くなり眉間に皺を寄せていた。







『ドイツ国防軍がラインラントに進駐開始になったのはご存じですよね。

俺は歩兵として同行します…



でも、直属上司が親衛隊の大佐でプロセイン王国時代の貴族なのであまり前線ではないのでご心配には及びません』








『ハンス、いつ発つ?』





『五日後です』




「それでパパにお願いがあるの…」






『なんだ…』





パパはまだ不機嫌な様子…





「ハンスと一歩進んでもいい?」




『どういう意味だ?』



パパは低い声で言った。



ハンスは私に目で

―後は
俺の仕事―と合図した










『クリスティーナと行きたい場所があって一泊します』




『クリスティーナ、学校は?』




「みんな就職先が決まってたり、するからもう殆どする事はないの」







『どこに行くんだ?』








パパは私の返事など聞いてもいないような様子でハンスに尋ねた。


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