一枚の壁
『クリスティーナ!
この方は?』
「エリーナ叔母さん…
なに言ってるの。
ハンスお兄ちゃんよ」
『お久しぶりです。
マダムエリーナ(笑)』
『わからなかったわ(笑)
凛々しい姿ね!
兵学校は?』
『卒業しました』
『何故この店に?』
『クリスティーナの家に行くと、クリスティーナはマダムエリーナのお店でお針子見習いをしているとお聞きしまして…』
『わざわざクリスティーナに会いに来て下さったのね♪
そうだわ!
ちょうどお昼だし、若い二人で昼食に行ったら?』
「でも、叔母さん…
忙しいのに」
叔母さんが私に近づいてきてこっそり言った。
『ハンス君があなたにチケットを渡すためだけに来たと思う?
な、訳ないわよ。
さっ行きなさい(笑)』
「じゃあ、いってきます!」
『マダムエリーナ、クリスティーナをお借りします(笑)』
ハンスお兄ちゃんはひょうきんな調子で笑った。
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