valentine×kiss×2
デパートにはちゃんとした社員食堂もあるが、20分程度の休憩にわざわざ行くのも面倒で。
例のバックヤードに作られた簡易テーブルセットで、みんないつも休憩していたんだ。
だから今日は熊ちゃんの思惑通り、バックヤードで2人きりな訳でして…。
「さえちゃんてば彼氏いるの?」
「なに。とつぜ~ん」
「いるの?」
何だか声のトーンが低いよ。機嫌悪い?
「今はいないよ。どうして?」
熊ちゃんはジッと私を見つめると…
"ちゅ"
「え? えーー?」
「何びっくりしてんの? たかがほっぺじゃん」
「ほっぺてねー。何でキスなんてするのよ!!」
「さえちゃんが好きだから」
いつもの弟系のかわいい仕草ではなく、完全に男の顔をしてた。
「何、冗談を…」
続きは言えなかった。
だって今度は口にキスされたから。
「…ん、はぁ」
「何だ。ちゃんとキス出来るじゃん。さえちゃん」
私を見る熊ちゃんの顔は、ほんのり赤くて、でも意地悪そうな顔をしてたんだ。
どうしてそんな顔をするの?
「な、何で…?」