valentine×kiss×2


香川くんは戸惑いながらも話し出した。

「だって。さっきロッカーで、熊田がオレにチョコを見せながら言ったんだ。

"これ。さえちゃんから貰ったんだー。いいだろう。オレだけにくれるんだって。手作りだよ。限定一個だよ。香川くんはもらえないねー"

アイツ。自慢するだけして、ご機嫌に帰って行ったんだよ。

チョコ。アイツにあげたんだろ。なら、そういう事だと思うだろうが。

何か間違ってる?」

香川くんの表情に戸惑いと怒りが見える。

あ~。熊ちゃんが言ってた意地悪ってこれの事だったのね。

そうと分かったら、私の気持ちは急速に落ち着いて来て。

「誤解を招くような事してごめん。確かに熊ちゃんの言ってた事に間違いはないよ」

香川くんの眉間にまたシワが寄る。

「でもね、熊ちゃんは肝心な事を香川くんに言ってない」

「え…?」

「熊ちゃんにあげたチョコは、

"友チョコ"という名の
"義理チョコ"なの。

昨日おねだりされてね。急遽作ったから、中身も型で固めただけの、超簡単チョコなんだよ」

「オレ…」

頭をワシワシと掻きながら、恥ずかしそうにする彼がいたんだ。

「信じてくれる?」

「うん。ごめんな」

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