Ⅹ(クロス)
リディアの体は、黒い王国服から溢れ出る緋色の光に包まれていた。

その光りは幅広の帯の様な形状を成し、リディアの体をゆっくりと旋回している。


リディアはフェルナンドの問いには答えず、その碧色の瞳を真っ直ぐにフェルナンドを向けて言った。



「戦いは、止めてください。」





その時、会場にいた一人の民が言った。


「ラドニアの大地が危機に瀕する時、神は、眠れる精霊の力を呼び覚ます者を大地に遣わすという・・・」



「まさか・・・」



「クロス?!」



「でもリディア様は・・・ナユタでは・・・」






――ガシャ―ン!!




その時、礼拝堂の天窓を突き破って折れた木の枝が突き刺さった。

その割れ目から、嵐を思わせる激しい風が吹き込んで来る。


「キャ――!!」



会場は騒然となった。





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