Ⅹ(クロス)
ココが去った後、リディアは一人、織り機の前に立っていた。
(そうだ。 お礼に何か織ってみようかしら・・・)
リディアは、悪戯っぽく微笑むと、籠に盛られた糸を思いつくまま手に取り、次々と織り機に掛けていく。
(これよしっと。)
小さく頷いて、織り機の前の椅子にゆっくりと座り、目を閉じる。
(そうだわ。 この感じ・・・。
ずっと昔から、私は此処にこうして座っていた気がする・・・。)
―― ザワリ
(えっ?)
一瞬、リディアの全身に熱い気が騒ぐ。
リディアの体は、それに応じるように織り機を動かし始める。
シュッ… トントン…
ギギ…
シュッ… トントン…
ギギ…
その途端、リディアの操る糸からは、キラキラと青緑色に輝く無数の光の粒が溢れ出した。
それは、リディアの指に、足に、胸に、遊ぶように唄うように揺らめいては消える。
(どうして・・・)