Ⅹ(クロス)

――カチッ


ジャコスは、何本めかの煙草に火をつける。


「ライト、お前は彼女を・・・リディアを憎んでいるか?」

ジャコスは静かに訊ねる。


「初めは、そう・・・憎かったですよ。

突然僕から母を奪ったその子が、たまらなく憎かった。

でも、大人になるにつれ、あのラドニアを見るにつれ、分かってきたのです。

何故母が求められていたのか。 

何故、その子が生を受けなくてはならなかったのか・・・。」


ライトは、ゆっくりとその顔を上げると、ユウリに言った。



「彼女の気がもう少し落ち着いたら、彼女をシュラムの村まで連れて行ってください。

そして、そこにいる『ナフサ』という老女を訪ねてください。」


「ナフサ・・・。

シュラムの長老か。」


ジャコスはふぅっと大きく煙を吐く。



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