Ⅹ(クロス)
――ボォォォォォ

船の汽笛が遠くで鳴る。

リディアはそっとカーテンを開け、素足のままベランダへ出てみる。

見上げればそこには、雲の陰も無い澄みきった夜空が広がっていた。

今にも零れ落ちてきそうなほど沢山の星・・・。



(昔・・・こんな星空を眺めた気がする・・・。

随分昔、お父・・・様と・・・)




「ぁ・・・」



リディアは、思わず小さく呟いて両手で口を押さえ、しゃがみ込む。

その大きな碧色の瞳からは、大粒の涙が堰を切ったように溢れ出す。


後から・・・



後から・・・



後から・・・



(どうして・・・? 

どうしてこんなに・・・胸が・・・痛い・・・の?

どうしてこんなに・・・涙が・・ )







――ポンッ!
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