Ⅹ(クロス)
その時、小さな破裂音と共に通りの向こう側にある空き地から、白い煙のようなものが空に向かって打ちあがった。


(ぇ・・・? 何?)


リディアが涙を拭ってベランダの燦から音の出所に目を遣ると、そこには月の光りに照らされて、見覚えのある人影があった。



(あれは・・・ユウリ?

何を・・・しているの・・・?)


リディアは立ち上がって、もう一度良く目を凝らす。

しゃがんだその口元辺りでぽっと火が灯るのが見える。



リディアは少し躊躇いながらも、その足をベランダの脇の小さな螺旋階段へと向けていた。

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